難治性のニキビに 内服という選択肢を

公開日:2026年7月14日/最終更新日:2026年7月22日 | 執筆・監修:スキンクリニック相模大野 院長 山岸 大樹(日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医)

結論から言うと、イソトレチノインは保険診療で改善しなかった重症・難治性のニキビに対する選択肢であり、同時に慎重な管理を要する薬です。

効果が期待できる一方で、妊娠に関わる重大なリスクを含む副作用があり、日本では未承認薬です。この記事では、良い面だけでなくリスクも含めて率直にお伝えします。読んだうえで「自分には合わない」と判断されることも、正しい結論のひとつだと考えています。

イソトレチノインとは

イソトレチノインは、ビタミンA誘導体(レチノイド)に分類される内服薬です。海外では1980年代から重症ざ瘡(ニキビ)の治療薬として使われてきました。

日本の保険診療で使えるニキビ治療薬は、毛穴の詰まりを取る外用薬と、炎症を抑える抗菌薬が中心です。これらで十分な改善が得られない方が一定数いらっしゃいます。イソトレチノインは、そうしたケースに対して皮脂腺そのものに働きかけるという、まったく異なるアプローチをとります。

この薬は日本国内では未承認です

イソトレチノインは、日本において医薬品医療機器等法上の承認を受けていない医薬品です。当院医師の判断のもと、個人輸入により入手しています。同一の有効成分を含む国内承認医薬品はありません。諸外国における安全性等に係る情報として、重大な副作用等が明らかになっていない可能性があります。

個人輸入された医薬品は、医薬品副作用被害救済制度の対象外です。万が一重篤な副作用が生じた場合でも、公的な救済を受けられません。この点をご理解いただいたうえで治療を選択してください。

なぜニキビに効くのか

イソトレチノインは、ニキビができる4つの段階すべてに働きかけると考えられています。

ニキビの段階イソトレチノインの作用
① 毛穴の詰まり角化を正常化し、詰まりにくくする
② 皮脂の過剰分泌皮脂腺を縮小させ、皮脂の分泌量そのものを減らす
③ アクネ菌の増殖皮脂が減ることで菌の栄養源が減る
④ 炎症抗炎症作用

外用薬が①③④に働きかけるのに対し、②の皮脂腺そのものに作用する点がイソトレチノインの特徴です。「治療をやめるとすぐ元に戻る」という繰り返しから抜け出しにくい方にとって、ここが大きな違いになります。

ニキビができる仕組みについては大人ニキビが治らない原因で詳しく解説しています。

ニキビ治療の進め方を3段階で示した図。保険の外用薬から始め、改善が乏しい場合に薬剤変更、それでも難治の場合にイソトレチノインを検討する流れ
図1:当院でのニキビ治療の進め方。イソトレチノインは第3段階の選択肢です

保険治療との位置づけ

当院では、いきなりイソトレチノインをおすすめすることはありません。まず保険診療で治療できるかを確認するのが基本方針です。

治療の進め方

第1段階:保険診療の外用薬(ディフェリンゲル、ベピオゲル、エピデュオゲルなど)+必要に応じた抗菌薬。最低3ヶ月継続します。

第2段階:3ヶ月続けても改善が乏しい場合、薬剤の変更や併用を検討します。

第3段階:それでも改善しない重症・難治性のケースで、イソトレチノインをご提案します。

この順序を踏むのは、保険診療で治る方に、リスクのある未承認薬を使う必要がないからです。「早く治したいので最初から」というご希望をいただくこともありますが、まずは標準的な治療から始めさせていただいています。

治療の流れと期間

  1. 診察・適応の判断:これまでの治療歴、ニキビの重症度、既往歴、内服中の薬を確認します
  2. 血液検査:肝機能、脂質(中性脂肪・コレステロール)などを確認します。女性の場合は妊娠反応検査を行います
  3. 説明と同意:副作用、妊娠に関する注意、費用について詳しくご説明し、同意書をご確認いただきます
  4. 内服開始:低用量から開始し、経過をみながら調整します
  5. 定期的な診察・血液検査:内服中は定期的に受診いただき、副作用の有無を確認します
  6. 終了・経過観察

治療期間の目安:おおむね4〜6ヶ月、場合によってはそれ以上かかります。効果を実感し始めるまでには1〜2ヶ月ほどかかることが多く、開始から数週間は一時的にニキビが悪化することがあります(初期悪化)。ここで中断してしまう方がいらっしゃいますが、多くはその後改善に向かいます。効果には個人差があります。

費用(自由診療・税込)

項目料金(税込)
イソトレチノイン内服 30日分16,500円
初診料(画像診断機NeoVoir撮影込)4,400円
再診料1,100円

治療期間が4〜6ヶ月に及ぶため、薬剤費だけでおおよそ66,000円〜99,000円、これに診察料と血液検査費が加わります。開始前に総額の見通しをお伝えしますので、ご確認のうえご判断ください。最新の料金は料金表ページに掲載しています。

副作用について

イソトレチノインには、ほぼ全員に生じる副作用と、頻度は低いものの注意を要する副作用があります。

高い頻度で起こるもの

  • 皮膚・粘膜の乾燥:唇の乾燥・ひび割れはほぼ必発です。リップクリームが手放せなくなります
  • 鼻の粘膜の乾燥による鼻血
  • 目の乾燥(コンタクトレンズが装用しづらくなることがあります)
  • 全身の皮膚の乾燥、かゆみ
  • 日光に対する過敏(日焼けしやすくなります)

注意を要するもの

  • 肝機能の異常、中性脂肪・コレステロールの上昇(定期的な血液検査で確認します)
  • 筋肉痛、関節痛
  • 頭痛
  • 脱毛(多くは可逆的です)
  • 気分の落ち込み、抑うつ症状の報告があります

内服中に次のような症状があれば、すぐにご連絡ください

  • 強い頭痛、視覚の異常、吐き気(頭蓋内圧亢進の可能性)
  • 気分の落ち込みが続く、意欲の低下
  • 強い腹痛
  • 皮膚や白目が黄色くなる

妊娠に関する重大な注意

妊娠中の服用は、胎児に重篤な奇形を生じるおそれがあります

イソトレチノインには強い催奇形性(さいきけいせい=胎児に先天異常を起こす性質)があります。これは副作用のひとつではなく、この薬を使ううえで最も重要な前提です。

そのため、次の条件をすべて守っていただける方に限って処方します。

  • 内服開始前に妊娠していないことを確認すること
  • 内服中および中止後の一定期間、確実な避妊を行うこと(当院では中止後1ヶ月としています)
  • 男性の場合も、パートナーの妊娠に備えて内服中の献血を行わないこと
  • 内服中および中止後一定期間、献血をしないこと(輸血を通じて妊婦に渡るおそれがあるため)
  • 他人に薬を譲渡しないこと

妊娠のご予定がある方、避妊が確実に行えない方には処方できません。ご希望に沿えない場合がありますが、安全のためご理解ください。

服用中の注意点

  • ビタミンA(レチノールなど)を併用しない:作用が重なり、過剰症のリスクが高まります
  • テトラサイクリン系の抗菌薬を併用しない:頭蓋内圧が上がるおそれがあります
  • ダーマペンなどの施術を控える:皮膚が薄く脆くなっているため、内服中および中止後6ヶ月程度は避けてください
  • 徹底した保湿と紫外線対策:乾燥と光線過敏への対応が必須です
  • 献血をしない
  • 自己判断で中断・再開しない:初期悪化の時期に中断される方がいますが、必ずご相談ください

処方できない方

  • 妊娠中・授乳中の方、妊娠の可能性がある方、確実な避妊ができない方
  • 肝機能障害のある方
  • 脂質異常症のある方
  • ビタミンA過剰症の方
  • うつ病などの精神疾患で治療中の方(慎重な判断が必要です)
  • テトラサイクリン系抗菌薬を内服中の方
  • 本剤の成分に過敏症の既往がある方

施術を迷っている段階でも、公式LINEでご相談いただけます

「自分の肌に合う施術か知りたい」「まず費用の見積もりだけ聞きたい」といったご質問は、公式LINEからお気軽にお送りください。ご予約前の確認だけでも承っています。LINEからそのままご予約いただくことも可能です。

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当院での処方について

当院では、イソトレチノインの処方は月間約100件で、そのうち8割の方が他院での治療歴をお持ちです。

当院がこの薬について大切にしているのは、始める前に十分な時間をとって説明することです。効果への期待だけで開始すると、乾燥のつらさや初期悪化の時期に中断してしまい、結果的にリスクだけを負うことになりかねません。

そのため、イソトレチノインのご相談は自由診療枠でのご予約をお願いしています。保険診療枠では説明に十分な時間を確保できず、当日のご相談をお断りする場合があります。ご予約の際にお申し出ください。

また、内服中は定期的な診察と血液検査が必要です。「薬だけ出してほしい」というご希望にはお応えできません。安全に治療を進めるための条件としてご理解いただければと思います。

診察室でよくいただくご質問

「飲み終わったらまたニキビが出ますか」というご質問をよくいただきます。皮脂腺が縮小した状態がある程度持続するため、内服終了後も落ち着いた状態を保てる方が多くいらっしゃいます。ただし全員ではなく、再発して2回目の治療を行うケースもあります。「一生ニキビができなくなる薬」ではない、という点は最初にお伝えするようにしています。

よくあるご質問

Q1. 保険は使えますか

使えません。イソトレチノインは日本国内で未承認の医薬品であり、すべて自由診療となります。同一の診療において保険診療と自由診療を併用することもできないため、イソトレチノインの診察は自費のみとなります。

Q2. どのくらいで効果が出ますか

効果を感じ始めるまで1〜2ヶ月ほどかかることが多く、開始直後は一時的に悪化する場合があります。全体では4〜6ヶ月の治療期間を見込んでいただきます。効果には個人差があり、十分な改善が得られない方もいらっしゃいます。

Q3. 内服中にレーザーや脱毛は受けられますか

お控えください。内服中は皮膚が薄く傷つきやすい状態になっており、瘢痕(傷あと)が残るリスクが高まります。中止後も6ヶ月程度は避けることをおすすめしています。施術のご予定がある場合は、内服開始前にご相談ください。

Q4. 途中でやめても大丈夫ですか

安全上の理由で中止が必要な場合もありますので、やめたいと感じたときは自己判断ではなくご相談ください。ただし初期悪化の時期に中断すると、リスクだけを負って効果を得られないまま終わることになります。つらい症状がある場合は、量の調整で対応できることもあります。

繰り返す重症のニキビでお悩みの方は、一度ご相談ください。
まず保険診療で治療できるかを確認したうえで、選択肢をご提案します。

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監修:山岸 大樹(やまぎし ひろき)

スキンクリニック相模大野 院長

香川大学医学部卒。東京慈恵会医科大学附属病院皮膚科に長年勤務し、地域クリニックでも診療経験を積む。2024年8月、相模大野にて開院。一般皮膚科から美容皮膚科まで幅広く診療にあたる。

日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医

参考文献・引用元

  • 厚生労働省「医療広告ガイドライン」
  • 厚生労働省「個人輸入された医薬品等の使用に関する注意喚起」
  • 日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン」

※本記事は情報提供を目的としたものであり、診断・治療を確約するものではありません。治療の効果には個人差があります。自由診療の料金はすべて税込表示で、2026年7月時点のものです。料金は予告なく変更となる場合があります。医療広告ガイドラインに基づき作成しています。