粉瘤とは
比較的頻度が高い、皮膚の良性腫瘍です。皮膚の中で袋ができ、その中に古い角質や皮脂が溜まる、というところはわかっているのですが、なぜできるかは分かっていません。毛穴詰まりなどとは異なり、清潔にしていなかったからできる、というものではありません。
皮膚のどこにでもできる可能性がありますが、中でも顔、首、背中、耳のうらにできやすいです。
最初は小さなできもので、特に痛みなどもありません。ゆっくりと大きくなっていき、大きさは様々で、院長は最大20cmのものを手術したことがあります。
できものの中心に小さな黒い点(開口部)があり、圧迫するとそこから嫌な匂いのするものが出てくる、というのも特徴です。
放置しておいても基本的には問題がないのですが、感染を起こすと赤く腫れてしまいます。大きく腫れてしまうとそこに膿がたまり、痛みが出ます。
炎症を繰り返すと周囲の組織と癒着してしまうため、手術をするときに出血しやすくなったり、稀に悪性化することもあるため、早めの診察・治療が大切です。
粉瘤の治療
外用薬などでは治らず、手術できれいに取り除かなければ再発します。部位や大きさにもよりますが、特別大きなものや、頭部の深い部分にある粉瘤でなければ、局所麻酔による日帰り手術での治療が可能です。
予約状況によりますが、空きがあれば当日の手術も可能です。なお、粉瘤の部位や大きさによっては、大学病院などへの紹介が必要となることがありますので、ご了承ください。
粉瘤は悪性腫瘍ではありませんが、ゆっくり大きくなってくるできものです。大きくなれば、その分手術による傷跡も大きくなります。また、炎症がおきると痛みがでるだけでなく、その後の皮膚への負担も大きくなります。
当院では炎症が起きる前に、小さなうちに手術で取ってしまうことをおすすめしています。
粉瘤の手術には、大きく分けて2つの方法があります。
いずれも保険診療の範囲内となりますが、大きさや部位によって費用は異なります。
①一般的な手術、紡錘形に切除
木の葉型に皮膚の切開線を作り、縫合します。
古典的な方法ですが、一般的な粉瘤の手術はこちらの方法となります。
取り残しのリスクが少ないため、炎症を複数回起こしていて癒着が強い粉瘤、サイズの大きな粉瘤にはこちらの手術をおすすめします。
②「くり抜き法」による切除
「くり抜き法」は、デルマパンチと呼ばれる、丸い穴を開けるメスの仲間を使って手術をします。
腫瘍の中心、黒い点のある部分に3~4mm大の穴をあけ、その穴から袋を取り除きます。
炎症を起こしたことのない粉瘤、500円玉くらいまでの粉瘤にはこちらの手術をおすすめします。
傷が目立たないというメリットがありますが、癒着が強い場合には、袋を取り残してしまう可能性があり、場合によって途中で①の一般的な手術に切り替えることがあります。
粉瘤手術の流れ
できものが粉瘤であるかどうかを診察します。
手術の説明を行い、ご同意いただければ同意書にサインをしていただきます。合わせて手術前の血液検査を行います。
粉瘤の部位や大きさによっては、大学病院などへの紹介となることがあります。
局所麻酔をして、粉瘤を切除します。大きさや部位によって手術時間は異なりますが、30分~1時間ほどで手術は終了します。
術後1週間から10日ほどで、傷の状態を確認するためにご受診いただきます。
縫合した場合は抜糸が必要となります。
治療の副作用・注意事項
・可能な限り傷跡を小さく、薄くするように手術を行いますが、傷跡自体は必ず残ります。傷が落ち着くまでには個人差がありますが、半年~1年程度かかることがあります。
・局所麻酔薬に対するアレルギーをお持ちの方は気分不快・血圧低下、ショック症状などを起こすことがあります。体調に変化が出た際は遠慮なくお知らせください。その場合は治療内容を変更する可能性があります。
・妊娠中・妊娠の可能性のある方、授乳中の方は事前にお申し出ください。
・抗凝固薬、抗血小板薬(血液をサラサラにする薬)を内服中の方は事前にお申し出ください。
・ケロイド体質の方は傷跡が目立つ場合があります。事前にお申し出ください。
・陰部周囲の手術をした場合、下着が汚れる可能性があるため心配な方は紙ナプキン、パッドをご持参ください。
・傷跡のひきつれ感が残る場合がありますが、数日~1週間程度で慣れてきます。
・基本的には手術の翌日に受診いただき、傷の状態を診察します。
・縫合した場合、1~2週間で抜糸が必要です。必ず抜糸の予定が取れるタイミングで手術を予約してください。
・手術部位によっては陥没や盛り上がりなどの傷が残ることがあります。
・治療部位に色素沈着が生じることがありますが、時間経過とともに消失していきます。色素沈着予防のため治療期間中は日焼けを避け、日焼け止めも外用してください。
・切除した病変によっては再発の可能性があります。その際は必要に応じて再手術などで対応します。
・臨床診断と組織診断の結果が異なる可能性があります。
・手術の処置等に関しましては、事前説明での予測を超えることがあります。その際は事後承諾とさせていただきます。合併症に対しては状況に応じて対応いたします。