原発性手掌多汗症
多汗症は、手のひら・足の裏・わきなど、限られた部位に多量の汗をかく病気です。
その中でも「手のひら」に大量の汗をかく症状を**原発性手掌多汗症(げんぱつせいしゅしょうたかんしょう)**と呼びます。
緊張したときに手に汗をかくのは自然なことですが、この病気の方は普段の生活時でも大量の汗が出ます。
書類を濡らしてしまったり、握手やパソコン操作がしづらくなるなど、日常生活に支障をきたすこともあります。
2023年6月には、手掌多汗症専用の塗り薬(保険適用)が登場し、治療の幅が広がりました。
多汗症とは
人は体温調節のために汗をかきますが、必要のないときにも大量に汗が出てしまう状態を多汗症といいます。
原因はさまざまで、大きく分けると以下の3つに分類されます。
- 原発性局所多汗症
明らかな原因がなく、特定部位(手、足、わき、顔など)に左右対称に多く汗をかくタイプ。 - 続発性局所多汗症
内科疾患、外傷、腫瘍、薬の副作用などが原因で発症します。 - 全身性多汗症
体全体から大量の汗が出ます。薬剤、感染症、内分泌疾患などが原因になることがあります。
原発性手掌多汗症の特徴
- 幼少期〜思春期に発症することが多い
- 重症例では滴るほどの汗が出る
- 指先が冷たく紫色を帯びることがある
- 湿った皮膚はあせもや皮膚感染が起こりやすい
- 書類やスマホ、楽器演奏、握手など日常動作に影響
診断
日本皮膚科学会の診断基準に基づき、6か月以上続く手のひらの多汗があり、以下のうち2項目以上を満たす場合に診断されます。
- 25歳以下で発症
- 左右対称に発汗
- 睡眠中は発汗しない
- 1週間に1回以上発汗がある
- 家族歴がある
- 日常生活に支障がある
治療方法
当院では保険適用治療と自由診療の両方から、症状や生活スタイルに合わせた治療を提案します。
1. アポハイド®ローション20%(保険適用)
2023年6月に発売された、日本初の手掌多汗症専用外用薬です。
有効成分:オキシブチニン塩酸塩
- 対象:12歳以上
- 使用方法:1日1回、就寝前に手のひらに塗布
- 効果:アセチルコリン受容体を遮断し、発汗を抑制
- 注意点:塗布後は目や口に触れない/翌朝は流水で洗い流す
- 副作用:皮膚のかゆみ・炎症、口渇、便秘、排尿困難など
2.イオントフォレーシス(保険適用)
水道水イオントフォレーシスは、微弱な電流を利用して発汗を抑える治療法です。
- 痛みの少ない治療: 治療中に痛みを感じることはほとんどありません。もし痛みを感じる場合は、出力を調整して対応します。
- 保険適用: 保険適用であり、経済的な負担が軽減されます。
- 副作用の心配が少ない: 代償性多汗(治療部位以外に汗が出る)などの副作用がないため、安心して治療を続けられます。
- 全年齢対応: お子様から大人の方まで、年齢に関係なく治療を受けることができます。
詳細はこちらのページもご確認ください。
3. ボトックス注射(自由診療)
エクリン汗腺の働きを抑える注射療法です。
- 特徴:効果は3〜6か月持続
- メリット:1回の施術で長期間効果が期待できる
- 当院の使用製剤:アラガン社製「ボトックス ビスタ®」(厚労省承認)
- デメリット:注射時の痛み、費用が保険適用外