性感染症

性感染症とは

主に性行為を介して人から人へ感染する病気です。性交そのものだけでなく、口腔性交(オーラルセックス)など、広い範囲の性行為(粘膜接触)を含みます。泌尿器科、婦人科だけでなく、皮膚科へ受診されて気づく症状もありますので、ここでは皮膚科で対応することの多い疾患について記載します。

尖圭コンジローマ

  • ヒトパピローマウイルスというウイルスによる感染症です。
  • 性器・肛門周囲などに鶏のトサカ様のできものができ、痛みやかゆみなどの自覚症状はあまりないことが特徴です。性行為による皮膚・粘膜病変部との接触で感染します。潜伏期間は3週間~8ヶ月くらいです。
  • ベセルナクリームという塗り薬による治療、液体窒素を用いた凍結療法で治療します。数が多い、あるいは部位や大きさによっては電気メスや炭酸ガスレーザーによる切除を行います。※当院ではレーザーによって蒸散したウイルスを吸引できる機械がないため、レーザーなどでの切除は行えません。ご希望の場合には紹介とさせていただいております。

梅毒

  • 梅毒トレポネーマというスピロヘータによる感染症です。性行為による皮膚・粘膜病変部との接触により感染し、潜伏期間は約3週間です。
  • 症状の進行に応じて1期から4期に分類されています。まず初めに、感染部位(性器、口など)に赤色の硬いしこりやただれができ、リンパ節が腫れます(第1期)。その後、3~12週間程度で、発熱や全身倦怠感などの全身症状とともに、皮膚に様々な症状が現れます。このあたりで皮膚科を受診される方が多いです(第2期)。
  • 以降、一時的に症状が落ち着くことがありますが感染が持続し、10~30年という長い間かけて心臓や血管、脳が冒されます(第3、4期)。
  • 一般的には血液による抗体検査で診断を行います。
  • 治療にはペニシリン系の抗菌薬を比較的長期間使います。放置すると徐々に進行し、死に至ることがあります。また、母体の感染により、出生児が先天梅毒になることがあるため、早めの治療が必要です。十分な治療を行うことで治る病気ですが、抗体が作られることがないため、治っても再度の接触がある場合には再感染を起こします。

サル痘(エムポックス)

エムポックスは、1970年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)でヒトでの初めの感染が確認された、オルソポックスウイルス属のサル痘ウイルスによる感染症で、中央アフリカから西アフリカにかけて流行しています。国内では感染症法上の4類感染症に指定されています。
国内では、2022年7月に1例目の患者が確認され、その後報告数が増加しています。
感染した人や動物の皮膚の病変・体液・血液との接触、患者との接近した対面での飛沫への長時間の曝露、患者が使用した寝具等との接触等により感染します。
発熱、頭痛、リンパ節腫脹など、風邪の症状が0-5日程度持続し、発熱1-3日後に発疹が出現します。皮膚の発疹は顔面や四肢に多く出現し、徐々に隆起して水疱、膿疱、痂皮となります。性行為による感染の場合、肛門や性器周囲にも多く見られます。
多くの場合2-4週間持続し自然軽快するものの、小児例や、あるいは曝露の程度、患者の健康状態、合併症などにより重症化することがあります。
現在国内で利用可能な薬事承認された治療薬はなく、対症療法となります。また4類感染症のため、疑わしい方が受診された場合には指定医療機関へご紹介させていただくこととなります。